10/25/2022

初めて「俺の夢」という店名を耳にした読者は、俺こと店長の人となりが気になると思う。店名からして自信満々な豪快な男、否、漢を想像するだろう。その想像をこの店は決して裏切らないことに定評がある。(陵南の池上のディフェンスくらいの定評はある。)この店の売りは塩チャーハンらしい。だってメニュー表に「天下無敵の塩ラーメン」って書いてある。武田信玄の「風林火山」くらいのインパクトがある。そんなに自信があるならと塩チャーハンを注文した。店長自ら中華鍋を振るう後ろ姿。この勇姿とくと目に焼き付けろと言わんばかりに本能寺が燃えんとする火力で中華鍋を豪快に煽る。中華鍋を豪快に煽るたびに舞い上がる米粒達。その舞い上がった米粒達は体感半分くらい中華鍋からこぼれ落ちる。その姿なんと豪快なことか。店長はこぼれ落ちる白米になど一瞥もくれない。無慈悲な将軍なのか？否、そんなことはない。店長は誰よりも慈悲深い。米粒達のことを家族だと思っている。その米粒達が中華鍋から落ちることに何も感じない訳がない。きっと、心の底は男泣きしているはずだ。だが、店長はお客さんの前では決して泣かない。きっと、閉店後厨房の奥で今日も死んでいった米粒を想って涙をこぼすのだろう。そんなことを考えて塩チャーハンを食べていたら、なんか泣けてきた。