naototabelog豆天狗 名古屋金山店naototabelog豆天狗 名古屋金山店10/25/2022未だ夏の暑さが残る9月初旬のお昼時。太陽は南の空の頂点からやや西に傾こうとしていた。衰えることを知らない陽の光照らすアスファルトの歩道の上で豆天狗の順番を待つ人たちが10人ほど溢れていた。しかし彼らは列を為していない。お客さんはまず店内で食券を購入し、店員さんから番号札を貰って外で雑多に待つスタイル。病院の待合室かの如く、番号を呼ばれたら店内に入るシステムのため、店前に列が出来る訳ではないのだ。そのため番号札を受け取った人達はアスファルトの歩道の上で列を作る訳でも無く、好きな場所で待つことになる。 ここで重要なのは順番待ちの人間全員が立っている訳ではないということ。お店の前には丸椅子が3つ。必然的に番号が最も若い人間が丸椅子に座るという明文化されていないエコシステムが構築されていた。しかし、ある瞬間を境にその生態系は崩壊した。その場で最も若い番号札を持った人間が着席を拒否したのだ。10人以上が炎天下に立っているのに丸椅子には誰も座らないという異常な状況が完成した。元来、私はこういう時に空気を読まずに率先して座る性格だが、今後の動向が気になったので敢えて見に回った。張り詰めた空気に耳鳴りがしそうな膠着した雰囲気。皆が座りたいのに誰も座らないという不合理の最たる姿。誰もがその一歩を踏み出せずに立ち尽くしていた。悔しさに肩を震わせる者さえいた気がする。この空気を打破する救世主は現れないのか。私は皆の不合理な選択に辟易としつつ、自ら椅子に座ろうとした刹那、突如としてそのメシアは産声をあげた。小さな男の子の兄弟だった。男の子二人は無邪気にはしゃぎながら覇王の椅子に着座した。 大人たちの諸君へ。この子供たちのような純粋で合理的な判断を見習うべきではないだろうか? 子供たちよ。どうかその純粋な気持ちを忘れないで今後の人生を歩んでいってほしい。豆天狗に入っていく二つの小さな背中を私は眉を顰めて見送っていた。
10/25/2022
未だ夏の暑さが残る9月初旬のお昼時。太陽は南の空の頂点からやや西に傾こうとしていた。衰えることを知らない陽の光照らすアスファルトの歩道の上で豆天狗の順番を待つ人たちが10人ほど溢れていた。しかし彼らは列を為していない。お客さんはまず店内で食券を購入し、店員さんから番号札を貰って外で雑多に待つスタイル。病院の待合室かの如く、番号を呼ばれたら店内に入るシステムのため、店前に列が出来る訳ではないのだ。そのため番号札を受け取った人達はアスファルトの歩道の上で列を作る訳でも無く、好きな場所で待つことになる。 ここで重要なのは順番待ちの人間全員が立っている訳ではないということ。お店の前には丸椅子が3つ。必然的に番号が最も若い人間が丸椅子に座るという明文化されていないエコシステムが構築されていた。しかし、ある瞬間を境にその生態系は崩壊した。その場で最も若い番号札を持った人間が着席を拒否したのだ。10人以上が炎天下に立っているのに丸椅子には誰も座らないという異常な状況が完成した。元来、私はこういう時に空気を読まずに率先して座る性格だが、今後の動向が気になったので敢えて見に回った。張り詰めた空気に耳鳴りがしそうな膠着した雰囲気。皆が座りたいのに誰も座らないという不合理の最たる姿。誰もがその一歩を踏み出せずに立ち尽くしていた。悔しさに肩を震わせる者さえいた気がする。この空気を打破する救世主は現れないのか。私は皆の不合理な選択に辟易としつつ、自ら椅子に座ろうとした刹那、突如としてそのメシアは産声をあげた。小さな男の子の兄弟だった。男の子二人は無邪気にはしゃぎながら覇王の椅子に着座した。 大人たちの諸君へ。この子供たちのような純粋で合理的な判断を見習うべきではないだろうか? 子供たちよ。どうかその純粋な気持ちを忘れないで今後の人生を歩んでいってほしい。豆天狗に入っていく二つの小さな背中を私は眉を顰めて見送っていた。